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隠語 東京都済生会向島病院 加藤 弥子 特定の業界や仲間内で使われる言葉を総じて「隠語」と呼ぶ。専門用語とは異なり、言語上は正しくない造語でありながら、個々のカテゴリー内では一般用語的に使われる通用語で警察関連では「ごんべん」や「ねむり」、芸能界関連では「バミる」や「ケツ」などがある。 医療会でもとりわけ多くの隠語が使われる。たとえば「ステル」、ドイツ語のステルベン sterben を略し日本語として発音しやすいように作られた隠語である。病院内で「亡くなった」とか「死んだ」などという表現は他の入院患者様に聞かせたくないし、不吉な表現でもあるので部外者にはわからない言葉を故意に使用している。 「ムンテラ」もよくできた隠語でドイツ語のムント mund(口)とテラピー therapie(治療)を合成して作られており、あえて訳すならば「口述療法」といったところ。患者様やその家族への口頭による治療法、診断結果の説明のことで、重大な内容も多いためプライバシー保護にもなっているのである。 このような隠語は仲間内で秘密を守るという本来の意味をまっとうしていると思うが、日常業務内では摩訶不思議な勝手な略語のようなものも多い。 赤血球数や白血球数を測定する血液算定検査を「まっけつ」と言ったり(通常、血液検査はすべて末梢血で測定するが)、本来、TPNやIVHと略される鎖骨下静脈などの中心静脈からの栄養療法を IV と略したり(IV では静脈路確保するだけである)と首をひねりたくなることも多い。 とはいえ、現場で日常的に使われている以上、これらの隠語も文化のひとつとして受け止めよう。 (会報JAMT 2006年4月号掲載) |
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