カビは,ご存知のように,日々の生活の中のいたる所でお目にかかる。
風呂場のタイルの目地や流しの防水シリコーンには,クラドスポリウムやアルテルナリアなどが生えている。
家庭用品や電子機器などに生えると,栄養源の取り込みで濃淡電池を形成し,表面が腐食したり変色や強度の劣化が起こる。また,台所には「味噌,醤油,みりん,納豆,酒」など生活に有益な発酵食品も数多い。よく利用される糸状菌としてはアミラーゼ,プロテアーゼ活性の強いアスペルギルスがある。 1. Aspergillus oryzae は清酒,味噌,醤油に 2. A.niger は焼酎に 3. A.glaucusはカツオ節の製造にそれぞれ利用されている。ちなみに,アスペルギルスの名前の由来は頂嚢の形がカトリックの儀式に用いられる潅水刷毛(Aspergil?lum )に似ているところから名づけられた。酵母では,アルコール発酵力が強いサッカロミセス(Saccharomyces )がよく利用されている。 4.S.cerevisiae はビールやぶどう酒,清酒,パンの製造に,また 5.S.rouxii はその耐塩性を利用して醤油造りに用いられている。工場に目を移すと 2.のA.niger はクエン酸やグルコン酸の製造に,1.のA.oryzae と 4.のS.cerevisiae は飲料用,工業用アルコールの製造に使われ,また検査室になじみの深いグルコースオキシダーゼはA.niger から造られている。
このように,今後ますます真菌や細菌を利用した技術が発展するであろうが,生物兵器をはじめとする「負の技術」には利用しないで欲しいものだ。
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